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守るべきもの――裏方で価値を届ける現場主義の経営
2026.08.31
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【対談】ニットーパック 代表取締役社長 伊藤 弘康 ✕ ジムマネジメント 代表取締役 村山 太一

創業90年を超える包装資材メーカーの老舗、ニットーパック株式会社。2025年7月に代表取締役に就任した伊藤社長は、「現場の足元」を固める道を第一に選んだ。IT、人材領域で奔走する村山が、老舗企業の変革と、守るべき「ものづくりの魂」について切り込む。
「情報の伝達・保護・物流」パッケージに込める3つの役割
村山
今回、工場を拝見して驚きました。普段何気なく手に取っているお菓子の袋やレトルトパウチですが、実はかなり高度な技術が詰まっているのですね。
伊藤社長
そう言っていただけると嬉しいです。私たちはパッケージを「主役を引き立てる最高の脇役」だと考えています。役割は大きく分けて3つ。「情報の伝達」「内容物の保護」「物流の効率化」です。
村山
単に包むだけではないと。特にフィルムの構造が、商品によって全く違うというお話が印象的でした。
伊藤社長
ええ、私たちの製品は単層ではなく、何層もの素材を組み合わせてできています。例えば、湿気に強いポリプロピレンはお菓子に、衝撃に強いナイロンはお米や園芸用の土のような重量物に。中身に合わせて「最高の組み合わせ」を作るんです。
村山
その組み合わせの最適解を出すのは、機械ではなく「人」の仕事なのですか?
伊藤社長
その通りです。弊社の営業担当や品質担当がその選定を担っています。中身の成分や流通形態を分析して仕様を決める。非常に専門性が高い仕事です。
経営者が現場に立つ理由
村山
従業員の方々とはどのようにコミュニケーションを取られているのでしょうか。
伊藤社長
なるべく数多く製造現場に入るよう心掛けています。実は私、工場長に就任した当時は「歴代で一番機械を知らない工場長」と言われていたんですよ(笑)。営業出身でしたから、本当にその通りでした。
村山
その状況から、どうやって現場の方々と信頼関係を築いていかれたのですか?
伊藤社長
とにかく現場に居続けること、それだけです。挨拶をして回る、一緒に掃除をする。そうすると、形式的な面談では出てこない本音や、現場の困りごとが自然と耳に入ってくるようになりました。
村山
あえて「1 on 1」のような形を作らず、日常の風景に溶け込むことを選んだのですね。
伊藤社長
選んだのではなく、それしかできなかったのです(笑)。
ただ、一緒にいると、「あ、眼鏡変えたな」とか「少し元気がないな」といった小さな変化に気づけます。その気づきの積み重ねが、組織の綻びを防ぐことに繋がると思ったのは事実です。
現場の誇りを守ることを最優先に
村山
伊藤さんが、就任してから一番大切にしていることは何ですか?
伊藤社長
パッケージを一生懸命つくる。弊社が愚直にやってきたことを続けることです。
村山
新しいことに挑戦するのも経営の醍醐味だと思いますが、そういった考えはありますか?
伊藤社長
当然あります。ただ、優先順位はありますね。
汗まみれになっている現場、走り回っている営業、それを支える間接部門、一生懸命やっている仲間にまず光を当てること。
弊社にとって、本業の足元を固めることが最優先だと考えています。

組織に風を通すリセットの断行
村山
組織を率いる上で、時には厳しい決断も必要になりますよね。複数ある部署をどう活性化させるかは、私にとっても大きな課題です。
伊藤社長
私は可能な限り、ジョブローテーションを進めたいです。同じ場所に長く居すぎると、どうしても「できない理由」を探す負け癖や、属人化による不透明さが生まれてしまいますから。実際、私もそうでした(笑)。
村山
変化を嫌う反発はありませんか?
伊藤社長
「私がいなければ回らない」という状況は、組織にとって最大の弱点です。環境を変えることで、本人が新しい才能に気づいたり、隠れていた問題が改善に向かったりするケースもたくさんあります。
何より、さまざまな経験をすることで、今後同じ経験をするであろう後輩たちにも優しく接することができるようになります。失敗を許せる雰囲気づくり。結局、思いやりですね。
人を繋ぎ、ミスマッチをなくす
村山
実は弊社も、今春から「人」に関わる新しい事業をスタートさせる予定なんです。今はIT人材の派遣がメインですが、新たに転職エージェント事業に挑戦します。
伊藤社長
それは大きな挑戦ですね。どのような想いで始められるのですか?
村山
一番の目的は「ミスマッチを減らすこと」、この一点に尽きます。今の転職市場は非常に盛んですが、一方で、若者や学生たちが「よくわからないまま、とりあえず決まった会社に入る」という現状も多い。結果として、すぐに辞めてしまう人が後を絶ちません。
伊藤社長
せっかく入社した仲間がすぐに去ってしまうのは、会社にとっても本人にとっても寂しいことですからね。
村山
そうなんです。だからこそ、将来的に学生も含めて「本当に働きたい場所」に繋げられるようなサポートをしたい。
まずは中途採用の支援から地道に始めていきますが、ニットーパックさんのような「誠実さ」を持った企業と、「志」ある人を正しくマッチングできる仕組みを作っていきたいです。
100年目の景色へ
村山
最後に、これからの展望について教えてください。
伊藤社長
うちはもうすぐ100年です。派手な会社ではないですが、長く続いてきた理由は“誠実さ”だと思っています。
お客様と社員を大切にすることを、先輩たちが続けてきました。私もそれを続けたいです。
村山
新しい挑戦についてはどう考えていますか?
伊藤社長
難しいことにはどんどん挑戦していきたいです。マーケットの変化や環境保全に対する意識の高まりにより 、私たちのやるべきことが増えてきました。現場は本当に忙しいですが、その分大きなやりがいを感じています。 みんなで力を合わせて一生懸命取り組み、成長していきたいです。
そして、気持ちよく次の世代にバトンタッチ出来たら最高ですね。
【編集後記】
パッケージは主役ではありません。しかし、その役割の重さを考えると、“脇役”という言葉だけでは到底片づけられない存在です。
100年近い歴史の中で磨かれた「誠実さ」は、何か特別な一手によるものではありません。現場に足を運び、対話を重ね、一つひとつ判断を積み重ねてきました。その愚直なまでの連続こそが、今の姿を形づくっています。そうした営みが、企業の価値を静かに、でも確かに支えていると言えるでしょう。
そしてもう一つ、本対談で浮かび上がったのは「人と企業の関係性」です。どれだけ確かな技術を持つ企業であっても、その魅力が伝わらなければ、共鳴する人には届きません。ジムマネジメントが目指しているのは、そうした人と企業を正しく結びつけることだと、改めて感じました。
