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時を超える手紙が、人の心を動かす――川越の“手紙屋”が生まれた理由と、格闘家の志
2026.08.03
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【対談】 WMO世界フェザー級チャンピオン 瀧澤博人 ✕ ジムマネジメント 代表取締役 村山 太一

埼玉県川越市。小江戸の情緒が残るこの街の一角に、時を止めたような不思議な空間がある。1年後の自分に手紙を届ける事業や、悩みを相談できる「主人へのお便り」など、人々の心に寄り添う活動を展開する瀧澤博人氏。現役格闘家として世界の頂点を目指す彼が、なぜ「手紙」というアナログな手法で人の心を動かそうとするのか。ジムマネジメントの村山が、活動の根底にある「志」に迫った。
時を止める街で、「何もしない時間」を売る
村山
瀧澤さん、このお店は本当に面白いコンセプトですよね。全国からお客さんが来ていると聞きました。
瀧澤氏
おかげさまで。ご来店の一番の目的は「手紙のタイムカプセル」です。
ここで手紙を書いて、このポストに投函すると、1年後の自分に手紙が届くという体験ですね。店内には「過去」「現在」「未来」という三つのテーマが用意されており、来店者はそれに沿って手紙を書いていく。書き進めるうちに、泣き出すお客さんも多いんです。
村山
そんなに感情が動くものなんですね。
瀧澤氏
そうなんです。1時間近くかけて書き終えた手紙は、封ろう(シーリングワックス)で封印する。ロウを溶かし、印を押し、固まるのを待つ。その静かな時間もまた、この店の体験の一部になります。
ここは「何もしないこと」を売っているお店なんです。今のサービスって、何かをさせるものが多いですよね。でもここでは、自分と向き合う時間そのものが価値なんです。
過去の自分から届いたエール
村山
瀧澤さんはプロキックボクサーでもありますよね。この手紙の事業と格闘技は、どう繋がっているんでしょうか。
瀧澤氏
格闘家というのは、毎日心を燃やし続けないといけない世界なんです。厳しい練習もありますし、試合ではプレッシャーも大きいです。でも、その「動」の根源にあるのは、普段どれだけ穏やかでいられるかという「静」の部分なんですよ。
実は、大人になってから昔の手帳が出てきたことがあって。そこには「魂」という文字や「自分に勝つ」という言葉など、自分へのエールがびっしり書き込まれていました。それを見た時、「俺、こんなに純粋な気持ちを持ってたんだ」と、過去の自分からパワーをもらったんです。
村山
それが、このタイムカプセル事業の原体験になっているのですね。
瀧澤氏
そうです。人は皆、自分の中に答えを持っているはずなんです。でも、それに気づくきっかけはなかなか見つからない。自分と向き合う時間は、自分の心の奥にある「大事な引き出し」を開ける作業です。この時を超える街・川越で、そのきっかけを作れたら最高だなと思いました。
主人が答える、心に寄り添うお便り
村山
「主人へのお便り」というサービスはどういうものなんですか?
瀧澤氏
お店のポストに悩みを書いて投函すると、だいたい1か月後に主人から返信の手紙が届きます。一つひとつの相談に丁寧に応える形で綴られています。
村山
その返信は瀧澤さんが書いていらっしゃるんですか?
瀧澤氏
いえ、「主人」が皆さんのお悩みに寄り添いながら手紙を書いて届けています。恋愛や仕事、人間関係など、さまざまな相談が寄せられているそうです。

仕事の本質は「誰かの痛みを解決すること」
村山
働くことへのモチベーションはどう維持しているんですか?
瀧澤氏
仕事の本質は「誰かの痛みや悩みを解決すること」だと思うんです。お腹が空いた人のために料理を作る人がいるように、自分の仕事が誰の役に立ち、誰を喜ばせているか。そこを忘れなければ、モチベーションが落ちることはありません。
村山
でも、会社組織だとどうしても目の前の作業に追われて、その本質を見失いがちですよね。
瀧澤氏
だからこそ、外の刺激を入れることが大事だと思います。たった一言で人生が変わることもある。そして、頑張っている人を認め、褒めること。格闘技のジムでもそうですが、厳しい練習の先に成長があり、そこを認めてもらえるからこそ、また一歩踏み出せるんです。
夢を超えた先にある「志」
村山
瀧澤さんと話していると、他の人とは違う、まさに「ファイター」だと強く感じます。瀧澤さんがそこまで自分を律して突き進める理由はどこにあるんでしょうか。
瀧澤氏
昔は「いい車に乗りたい」といった「夢」が原動力でした。でも今は違います。試合に勝ったとき、泣いて喜んでくれるファンの姿を見たとき、気づいたんです。「俺は格闘技がやりたいんじゃない。誰かの心を動かし、喜ばせることが、俺の生まれてきた意味なんだ」と。
村山
それが瀧澤さんの「志」なんですね。
瀧澤氏
そうです。志に気づけば、手段は何でもよくなる。格闘技でも、実業でも、あるいは政治でも。3月の試合(※取材時は2026年2月)は、500年、700年の歴史を塗り替える日本人初の挑戦になります。「死ぬかもしれない」という覚悟で挑みますが、それは自分の人生を全うするため。
村山
すごいですね。私も「ジムマネジメントを100億企業にする」と言っていますが、その根底にあるのは「子供たちの未来を幸せにする」という志です。今の瀧澤さんの話を聞いて、改めてその思いが熱くなりました。
【編集後記】
川越という時を超えた街で、瀧澤氏が手がける「手紙」の取り組み。それは単なるサービスではありません。過去の自分から届くエールは、人々に自分と向き合う時間を与え、心の奥にある大切な引き出しを開くきっかけとなっているようです。
また、現役格闘家として世界の頂点を目指す日々の中にあっても、瀧澤氏が重きを置くのは「人の心を動かす」という一点です。その原動力は単なる個人の夢ではなく、揺るぎない「志」。日々の鍛錬も、一挙手一投足も、すべては誰かの喜びのためであることが伝わってきます。その生き方は、格闘技という枠を超え、ビジネスや日常のあらゆる場面に通じる普遍的な価値を体現しています。
今回の対談を通して感じるのは、目の前の成果や結果だけでなく、「誰かの心を動かすこと」に向き合う大切さ。
あらゆるものがデジタルで完結する時代において、手紙という体温の宿る手法が、これほどまでに鮮烈に人の心を揺さぶる。そんなシンプルな事実に、改めて深い感動を覚えました。
