blog
ブログ
ビジネスは戦いではない――「三方よし」の精神で変化し続ける組織のつくりかた
2026.05.25
ブログ
【対談】協同商事 代表取締役社長 朝霧 重治 ✕ ジムマネジメント 代表取締役 村山 太一

埼玉県川越市を拠点に、物流や農業、青果卸など多角的な事業を展開する株式会社協同商事。現在は「COEDOビール」の生みの親として、日本を代表するクラフトビールメーカーとしての地位を確立しています。
時代に合わせて主力事業を大胆にシフトさせながらも、一貫して変わらない「農業への想い」と「三方よし」の精神。代表の村山が、朝霧社長から「変化し続ける組織のあり方」と「次世代への承継」について伺いました。
物流からビールへ。根底にある「日本の農業」への想い
村山
協同商事さんは1970年代、お義父様が有機農業の物流から始められたそうですね。物流からビール製造へ、一見すると大きな転換に見えますが、その軸はどこにあるのでしょうか。
朝霧社長
当時は「新しい日本の農業を切り拓く」というミッションを掲げ、物流のシステム化で農業に貢献していました。しかし、物流という機能が一般化する中で、次にどう農業を支えるかを考えた時、農産物に付加価値をつける「製造業(ビール)」へ舵を切ることにしたんです。
村山
手法は変わっても、目的は一貫しているのですね。
朝霧社長
はい。「協同」という社名の通り、農家、会社、生活者が手を取り合う。この目的は創業以来、一切ぶれていません。
「地ビール」との決別。覚悟のリブランディング
村山
2006年に既存のラインナップをすべて終了し、「COEDO」として再出発されました。あの決断の背景には何があったのでしょうか。
朝霧社長
当時の地ビールは、観光地のご当地物、いわば「お土産物産業」でした。でも、私はビールが持つ「食の楽しみ」や「趣味性の高さ」を、改めて日本の方たちに知っていただきたいと考えたんです。
村山
その際、朝霧社長ご自身はどのような役割を担われたのですか?
朝霧社長
私は「事業プロデューサー」という立場です。デザイナーや醸造家といった専門家がプロジェクトチームとして機能し、それを実現していく。中身(ビール)についても、基本的には私がプロデュースし、職人たちがそれを形にするという役割分担で進めました。
結局、リブランディングとはイメージを変えることではなく、「新しい市場を作る」ということなんですよね。それまでの地ビールのあり方をリセットし、自分たちの考えるクラフトビールという市場を新たに定義する。それが私たちの挑戦でした。
組織を動かす「知・好・楽」
村山
多角化する事業の中で、組織を運営していく上で大切にされていることはありますか?
朝霧社長
私が細かく指示を出して管理するのではなく、社員が自発的に動く状態を作ることですね。その指針としているのが、論語の「知・好・楽」です。物事を「知っている」人より「好き」な人が強く、さらにそれを「楽しんでいる」人には誰も勝てない。社員が熱中して楽しんでいる状態こそが、事業を動かす最大の原動力になります。
村山
とても共感いたします。当社でも複数の事業・部署がある中で、興味のある部署に挑戦できる社内インターン制度を設けています。従業員一人ひとりの興味関心を大切にし、会社全体を広く知ってもらう機会として、積極的に活用してもらっています。

フラットな対話と「心理的安全性」
村山
従業員の方とのコミュニケーションについても伺いたいのですが、普段はどのような距離感で接していらっしゃるのでしょうか。
朝霧社長
特別な形式はなく、社員から「ちょっといいですか」と声がかかれば、その場で話が始まります。私自身、全員とフラットに接したいと考えていますし、何でも話せる「組織的な心理的安全性」を全員が持てる環境でありたいと常に願っています。
村山
若手のメンバーでも、朝霧さんと話しやすい環境なのですね。
朝霧社長
そうですね。社長室もなく、常に従業員と同じ空間にいます。工場に行っても、フリーアドレスのような状態です。みんなの話が自然と聞こえてきますし、私のほうからも会話に加わったりしています。
村山
とても素敵な環境ですね。私も従業員とのコミュニケーションが取りやすいよう、普段はフリーアドレスに座っております。立場に関わらず、気軽に声をかけてもらえる関係性を大切にしています。
相手を「業者」と呼ばない。「三方よし」を体現する行動規範
村山
内部のフラットな関係だけでなく、外部のパートナーさんに対しても非常に敬意を払われていますよね。その根底にはどのような考えがあるのでしょうか。
朝霧社長
私たちの行動規範、バリューの中に「三方よし」というのを入れています。お客様が喜んで、自分たちが良くて、社会が良くなる。利益というのは結果でしかなくて、やはり事業を通じて社会が良くなるとか、誰かが喜ぶということがあって、初めて利益が出る。誰かが苦労して、自分たちだけ利益が出るっていうのは、バランスが悪いわけです。
村山
具体的な社内のルールとしても、その精神が徹底されていると伺いました。
朝霧社長
はい。社内では協力会社さん、サプライヤーさんを「業者」と呼ばないようにしています。それを評価の中、倫理評価の中にも入れているんです。また、お客様は神様ではありませんから、価値を提供して、対価をいただくというフラットな関係であるべきだと思います。
村山
利益を追うことと、社会貢献のバランスをどう取られているのですか。
朝霧社長
何か特別なことをするのではなく、「意味があることであればいいじゃない」という、ただそれだけなんです。それが、我々のような組織が長く続いていくために必要なことだと思っています。
村山
非常に共感いたします。私は、従業員満足も顧客満足もどちらも大切だと考えておりますが、従業員満足の先にこそ顧客満足があると信じています。従業員一人ひとりが豊かで前向きな状態であれば、その姿勢や想いは必ずお客様に伝わり、より良い価値やサービスにつながると考えています。
【編集後記】
本対談は、協同商事が大切にしてきた普遍的な価値観、そして人と組織を動かす思想に触れながら、ジムマネジメントの企業としての在り方を改めて見つめ直す機会となりました。
事業の形を変えながらも、「日本の農業を支える」という志は決して変えなかった協同商事。時代に応じて手法を変えても、目的は見失わないこと。その姿勢の中に、企業としての揺るがない軸が感じられます。
また、「三方よし」、「知・好・楽」を組織づくりの根幹に据える考え方からは、成果を管理で生み出すのではなく、人の内側にある意欲や熱量が事業を前へと動かしていることが伝わってきました。
従業員が豊かで前向きな状態であることが、結果として顧客満足につながる。従業員満足と顧客満足は対立するものではなく、むしろ地続きにある ——。
その循環こそが、持続的な企業成長の基盤であると改めて実感しました。
ジムマネジメントは今後も、社会にとって意味のある価値を起点に、人が主体的に挑戦できる組織づくりを進めていきます。そして、従業員の可能性を最大限に引き出す環境を整えることで、その価値をお客様、そして社会へと還元してまいります。
